消えた夫

母の葬儀。

少ないながら親戚や母の友人が参列してくれた。

 

上の子たちにとっては、ママがお産で入院して、ジィジバァバと過ごしていたら、バァバが死んで、チイバァバの家から葬儀場に連れてこられて、そこでママと産まれたばかりの妹と会った。

 

あまりにもめまぐるしい展開、騒然とした雰囲気を感じ取り、2歳10ヶ月の長女、1歳5ヶ月長男は2人してグズグズ…。

 

祖父母の葬儀に、孫の声が響くのは悪いことではない、ある意味供養になると思うが、それにしても酷いグズグズでなだめても叱っても何をしてもグデングデンになってしまう2人。

 

夫に「ちょっと2人を連れて外の空気を吸って来てくれないかしら」上2人を夫に託した。

 

親族のお焼香が始まる。

そろそろ戻って欲しいな、夫婦で交替で子供を見ればいい、と思った。

 

あ…でも。私は夫にお焼香になる頃戻ってとは言わなかった。「チョット」という曖昧な伝え方では、彼には伝わっていないだろう。

 

私は会場を抜けて、外に出ているはずの父子三人を探した。どこにも居ない。携帯を鳴らしても電源をきっている。

 

ついに、父子3人は火葬場に行かなかった。

 

集まった人たちは、何かあったのではないかとすごく心配してくれた。

 

喪服姿の夫は子供たちと、動物園で遊んでいたらしい。

 

たしかに外の空気を吸って来て、と言ったけど。と、呆れてため息をつく私の態度が許せないと言って、夫は私の髪の毛を掴んで頭を下げて壁に叩きつけた。

 

初めて、自分の家で家族5人が揃ったその夜、私は子供3人を連れて家を出た。